〜経済気象台〜

ベースボール スタディ〜栗山英樹(週間朝日)(16.3.26)〜知識が多いほど野球は楽しくなる 
〜ボンズのアドバイス生かす元メジャー新庄の進化

 北海道に移転した日本ハムファイターズが元気だ。キャンプ地沖縄での紅白戦も大勢の人を集め、オープ
ン戦も2万人の観客動員。テレビ中継の視聴率もいいらしい。札幌ドームでのオープン戦は「おらがチーム」
の雰囲気が充満し、遺跡元年をいい雰囲気でスタートできそうだ。そのきっかけは、やはりSHINJOこ
と新庄剛志であることは間違いない。
 ファッションや、ファンの声援に気軽に返事をする姿など「野球人離れ」した言動が、野球に興味を持っ
ていなかった層を引きつけているのだろう。そんな新庄も開幕を目前に控え、
「これから勝負」
と厳しい表情になった。表面から想像もつかないほど、野球について考える男なのだ。注目される以上、何
が何でも結果を残したいという気持ちもあるはずだ。
 メジャーに移籍した頃、こんなことを言った。
「こっちに来て、とにかく考えていることは守備のことなんです。この部分で自分がチームに欠かせないと
いう形になれば、マイナー行きの心配をしなくてすむ。だから練習を含め、全ての集中力を守備に注ぐんで
す」
 メジャーでは外野守備の評価を日本以上にしてくれる。ヤンキースの松井秀喜も、トーリ監督が、守備を
考えればはずせない、と使い続けた。守備で出場機会をつかみ、打撃は徐々に慣れていく。その発想は正解
で、メジャーのボールの大きさは打者にとってやっかいだ。松井も昨季は前半に苦しんだ。
 新庄はメジャーにいる間、打撃についてこう受け止めていた。
「メジャーではボール二つ分くらい前でさばかなければいけない。そうしないと、ボールが重いし、すべて
のボールが小さく変化をし、ゴロになってしまう」

 彼にとってれ幸運だったのは、移籍したサンフランシスコで最高のチームメートに出会ったことだ。そう、
あの73本というメジャー本塁打記録を作ったバリー・ボンズだ。ボンズは人嫌いで有名だが、新庄とは仲
が良かった。取材に行くといつも2人で話をしていた。あるとき、ロッカーをのぞくと2人で軽食をとって
いた。
「とにかくおまえは右中間方向へ意識を持てばいいんだよ」
 というアドバイスをこんなときにもらっていたそうだ。日本に戻ってきた新庄の変化にお気づきだろうか。
無駄な動きがなくなって非常にシンプルになった。打撃を見ると、メジャーのときより打つポイントが体に
近づいている。長くボールを見られるので、とらえる確立が上がる。
そして、バットだ。
 オープン戦に入ってもまだ100%のフィーリングではないと、バットメーカーに作り続けてもらってい
るが、このバットはボンズと全く同じものだ。
ボンズに言われたそうだ。
「あまりグリップの部分が細いと力が伝わりにくいし、操作しにくいだろう」
 そこでボンズのバットを握ってみると確かに振りやすい。こうして自分に合うバットを見つけた。沖縄で
のオープン戦では日本用に注文していたバットが間に合わなかった。日本のプロ野球では試合で使っていい
バットには公認印が焼き付けられているが、審判にコミッショナー印のシールを貼ってもらって使っていた。
 思い出して欲しい。新庄はワールドシリーズで初めてヒットを打った日本人プレーヤーなのだ。元メジャ
ー新庄の大暴れする姿が楽しみだ。

(1961年、東京都生まれ、元ヤクルトスワローズ外野手、東京学芸大から83年入団、89年ゴールデ
ングラブ賞、引退後は大リーグ取材を兼ね、大学の教壇に立つ) 
                                          (野球解説者)



このコーナーは新聞・週刊誌各紙誌に掲載された中で経営に役立つと判断したものを掲載しています。


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