〜経済気象台〜

経済気象台(14.7.12) 安売り競争

 「安く売る」ということはサービスの一つで、本来は小売業の採る戦略だ。それへの協力もあって、
メーカーの価格戦略として「低価格」が重要課題になり、一般的に普及、定着してきた。これで市場と
企業が回っているうちはよいが、メーカーにとっては次の時代のマーケッティングを難しいものしてい
ないだろうか。
 低価格競争には負の側面も見受けられる。例えば、もの作りの現場で、特有の技術や研究開発への投
資がおろそかになり職人魂が風化していくとか、営業努力が単純になって、営業力そのものに磨きがか
からなくなる、とか。説明が必要な商品なのに感覚派の広告をし、ブランドの資産的な価値をどんどん
目減りさせ、目先の商品開発や改良に終始していくような風潮だ。
 低価格戦略は結果的に各社の総売上を落としている。仮に価格が半分になったからいって、一挙に市
場が倍にはならない。消費者が一度に2本のズボンをはくとか、ネクタイを2本締めて出かけるわけで
はないからだ。大切なことは総需要を刺激し、生活にヒントを与える消費者の目線の新しい市場を創造
することだ。
 多くの分野でマーケットが満杯状態になり、国内だけで考えると市場はそう簡単に膨らまない。新規
客よりリピーターが主役であり、シェアのつぶし合いは自社の先行商品や別ブランドとの争いにもなっ
ている。
 外食産業の低価格競争はおしゃれなコーヒーショップの進出をスムーズにして強敵を誕生させたし、
発泡酒の安売り合戦は肝心のビールのシェアを侵食し、各社の経営体質そのものに影響を与えているの
ではないだろうか。
 同じ業界や業種内で「一人勝ち」しても、うっかりするとその分野や業種全体にパワーを弱くし、異
業種・異分野からの参入を招く。だから安売り競争が新の勝者をつくる、とは言い切れないのかも知れ
ない。(み)



このコーナーは新聞各紙に掲載された中で経営に役立つと判断したものを掲載しています。
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